伊予鉄道路面電車と街の景観(愛媛県松山市)

伊予鉄道路面電車が街のなかに溶けこみ、城下町時代の都市骨格を留める松山の街の雰囲気を醸し出している。明治44年開業、各地の古い車両や新規車両を活用しつつ、現在も市民の日常生活に不可欠な存在として機能し続けている。日本各地に残る路面電車のなかでも、特に松山市の路面電車は、市民にとって日常生活の中で培われ、街のなかに溶け込んできた親しみ深い存在である。市民の暮らしのなかで、時間をかけて成立してきた風景として社会的価値が高い。 [地図]

湯築城跡(愛媛県松山市)

湯築城跡河野氏の居城であった梯郭式平山城の跡で、平成10~13年度に中世城郭としての形状を残しながら公園として整備された。武家屋敷や土塀なども復元しており、築城当時の雰囲気を作り出している。古いものを忠実に示すことで、歴史を学ぶこともできる都市内の公園として市民に活用されている。公園中心部は約30mの丘陵になっており、外堀と内堀が残存する。松山市道後地区のランドマークとして貴重な環境を有していると共に、中世城郭の雰囲気を作り出しており、その社会性と歴史性が高く評価される。(ゆづきじょうあと) [地図]

道後温泉本館と道後温泉(愛媛県松山市)

道後温泉本館と道後温泉道後温泉本館は1894年建築の公衆浴場で、ほぼ建築当時の姿を留めている。温泉利用者のための建築と、それを含む街全体が一体となって、独特の歴史的風致が形成されている。建築として貴重な本館とそれをとりまく街の景観は、長い時間をかけて作りだされたものであり、そのなかに道後温泉独特の雰囲気が溶けだしている点が評価される。また、その全体が市内外の多くの人々に親しまれている点も重要である。 [地図]

道後界隈と道後温泉駅(愛媛県松山市)

道後界隈と道後温泉駅道後界隈の空間は、温泉街の景観を形成し、伊予鉄道の温泉駅との連続したアプローチ空間が人を迎える風景となっている。温泉駅は、街づくりを念頭に再建築されたもので、街の風景を作り出す役割をしている。道後温泉は、古代より知られた温泉というその歴史性からも高い固有価値を有するが、温泉のみならず、周辺景観をよく考慮したうえで全体の街づくりがされている点が、現代に生きるランドスケープ遺産の良例として評価される。 [地図]

高開の石積み段々畑(徳島県吉野川市)

高開高開(たかがい)集落の急傾斜地に広がる段々畑。全ての段は石積みで作られており、今でも修復しながらそれを維持している。徳島の中山間地の特徴である斜面集落の典型的な事例であるといえるが、この規模や保全の状態を保っているのは珍しい。土が集まりやすい谷の部分が農地として利用され、岩盤が近い尾根上に家が立つなど、土地利用への知恵も垣間見られる。 [続き・地図]