インベントリー作成方針

ランドスケープ遺産インベントリー作成の基本的考え方

ランドスケープ遺産インベントリーは、基本的にランドスケープ遺産を評価しリストアップしたものですが、インベントリー作成は価値の高い遺産を厳選するのではなく、むしろ一定の価値評価の可能な対象をなるべく幅広く数多く集め、情報として整備することを基本方針としています。ランドスケープに関わる遺産的リストは文化財など制度の後ろ盾をもつもの以外にも○○百選等多数存在します。これに対して学会のスタンスはそれら全体を包括するような広いデータベースを把握しておくことが社会的意義にもつながるものと考えています。

ランドスケープ遺産の対象要件

遺産というと古いものが連想されがちですが、インベントリー作成にあたって対象の成立時代の制限は行わない考えです。たとえ最近生まれたものでも、将来に継承すべき価値が認められるものは含めます。また、既に文化財指定等、制度的保護措置が講じられているものも含めて考えます。これは上記のとおりできるだけ包括的であることを志向するからです。そして、対象の現在性(ないし現存性)を要件にしています。これも今ある価値を将来に繋ぐことを前提にした考えです。既に失われたものの記録も重要ですが、本インベントリーの範囲には含めないこととしています。

ランドスケープ遺産の対象種別

ランドスケープ遺産の対象は以下の種別に分けて捉えます。ただし排他的に分類することが目的ではなく、ランドスケープの広がりを多面的に捉えて対象を性格づけるための種別です。

A.デザインされた空間・景観(イベントを含む)

庭園や公園に代表されるような、意図をもってデザインされた空間・景観です。一時的に空間・景観化するイベントについても継続されているものは含めて捉えます。

B.生活・生業・信仰等により形成された空間・景観(イベントを含む)

文化的景観に代表されるように、生活、生業あるいは信仰などとの関わりの中で、主にアノニマスな環境への働きかけによって成立している空間・景観です。祭礼などのイベントも対象の範囲です。

C.時代・文化の中で価値付けられた空間・景観(イベントを含む)

名所に代表されるように、環境に対する物的な働きけよりも社会的な意味の付与によって価値が生まれ共有されている空間・景観です。近代社会が生み出した国立公園なども一例です。

D.生態学的特性など自然科学的な学術上の価値に特徴のある空間・景観

Cの一種ともいえますが、近代の自然科学的な学術上の評価が特徴として価値づけられる空間・景観です。里山の二次的自然などの場合はBとしての価値と重なる可能性も高いです。

E.その他(現存する空間・景観以外の計画・設計図書、道具・用具など)

失われた空間・景観自体は本インベントリ-に含めませんが、仮にその図面などが残されているとしたらインベントリーの対象です。これに限らず空間・景観・イベントを実現させるための図書や道具・用具類にも価値あるものがあり、それを対象とします。

インベントリー 一覧
全国のランドスケープ遺産