インベントリー一覧

地方ごとにインベントリーを紹介します。

北海道地方

函館公園

北海道は開発の歴史が浅く、本州などの古い地域に比べると、ランドスケープの変化や蓄積のプロセスが異なりますが、独自の自然や社会環境の中で造られ、育まれた貴重な遺産が数多く存在しています。特に、近代から現代への移行期にあって、欧米文化の導入に関連して造成された公園・緑地、都市形成に重要な役割を果たした公園・緑地、開発に伴い造成された環境緑地、開発から守られた自然緑地などが注目されます。また、日本や欧米の庭園技術の北海道風土への適応なども興味のある歴史的テーマです。対象は技術性、造形性、地域性、景観形成の側面、自然の保全・創出の側面、人々の思い入れなどの、いずれか又は複数の観点で高く評価されるもので、造園・ランドスケープの歴史的視点はもとより、将来のランドスケープ形成に役立てるうえでも貴重な存在です。(→一覧へ)

 

東北地方

十和田湖

東北のランドスケープ遺産について議論をすると浮かんでくるのは、東北では「文化的景観」が特徴ではないかというものです。近畿地方のように庭園が多くあるわけでなく、近代化の所産としての優れた都市公園が数多くあるわけでもありません。その一方で農村風景をみれば、他の地域では激しく変化が進んだことに比べると、東北においては一番残っているといえるのではないでしょうか。その一方で、遺産は多様性に富んだものです。庭園を生んだ歴史的背景としての藤原氏に地主制、桜前線の北上とともに話題となる2つの城址公園、古代からの代表的な歌枕としての松島、等々。このほかにも照葉樹林文化に対するブナ帯の縄文遺跡のランドスケープなども重要なものとして挙げられます。(→一覧へ)

 

関東地方

上野公園

関東地域は、西から北に丹沢山地、秩父山地などの山並みが広がり、下総台地、大宮台地、武蔵野台地などの台地群が低地を取り囲んで関東平野を構成し、東と南は太平洋に面しています。このような地域には、小笠原や秩父多摩の大自然、九十九里や大洗など海辺の風光、関東平野の屋敷林や新田地割、群馬や山梨の農業景観、鎌倉の寺院庭園や江戸東京の大名庭園、富士山と都内各所の富士見坂、那須塩原や湘南に顕著な近代の別荘庭園、都市づくりの一翼を担った近代の公園緑地、多摩ニュータウンなど戦後復興期の団地の遊び場など、多様なランドスケープ遺産が存在しています。(→一覧へ)

 

中部地方

ノリタケの森

中部地方は、複雑な海岸線を持つ海岸からアルプスなどの標高3000m を超える急峻な山々まで、変化に富んだ地形からなりたっています。そして太平洋岸から日本海岸までのいろいろな場所に位置する山村や農村、漁村では、生業や生活の形も多様な面を見せます。そうした場所に様々な人手が加わることにより、自然と人間活動が調和している多様な景観、場所ごとに異なる景観が育まれてきました。中部地方のランドスケープ遺産は多岐にわたっていますが、山、川、海などの自然に囲まれるような景観、そしてそこで発展してきた文化や生業及び産業にその特徴があります。例を挙げると、富士山や北アルプスの立山連峰などの山岳の美しい自然景観は古くから評価され、信仰の対象であり、また和歌に歌われ、浮世絵などの絵画にも描かれています。また、岐阜県の白川郷と富山県の五箇山の合掌造りの集落は、世界遺産に指定されています。人工的にデザインされてきた庭園や公園緑地に関しても、素材やデザインなどからどことなく地域性を感じることができるでしょう。(→一覧へ)

 

近畿・中国・四国地方

奈良公園

近畿・中国・四国にわたる地域のランドスケープ遺産には、海と山地・盆地が織りなす起伏に富んだ土地に、いにしえから続く独特の歴史・文化が刻み込まれています。中心部には日本最大の内海、瀬戸内海が広がります。古代日本において、大陸の新しい文化は、主にこの穏やかな内海を通り、その先の奥まった奈良盆地へともたらされていました。以後、日本を代表する「古都」奈良や京都、「商都」大阪・堺や神戸など、「関西」は日本の文化・経済の中心として栄え、連動して瀬戸内海沿岸域にも古くから文化が開けてきました。一方で、近代以降は中枢機能が東京に集中したため「関西」は独自の発展を模索し、瀬戸内海は文化の道から物流の道や工業運河に変貌していきます。このような地域固有の歩みが、景観の多様性と重層性を生みだしています。もちろん、自然と歴史が織りなす多層性は中心部に限りません。山間部や外海沿岸域にもまた、異なる自然環境のもと、人間の営みが生んだ独自の景観がそれぞれに見出されます。(→一覧へ)

九州・沖縄地方

仙巌園

九州・沖縄のランドスケープは、各地域の自然、風土、文化、産業などによって形成された多様性、地域性、時代性、場所性、社会性をそれぞれに有し、全般的にみて固有性の高さとバラエティの豊富さを誇っています。これらは、デザインされたランドスケープ空間から、生活や産業活動などの人為によって生み出された景観、自然の営為によって形成されている景観に至るまで、その領域の幅が極めて広いのが特徴です。九州・沖縄地方は、面積こそ全国の11.7% 程度にすぎないものの、温帯から亜熱帯にかけて広範に及んでいます。また地形も多様で、世界最大のカルデラを有する阿蘇山をはじめとする火山とその活動が造り出した地形によって半島や離島が多く、世界自然遺産に登録されている屋久島をはじめ、5つの国立公園と10 の国定公園が広がり、自然公園面積は全国の約15%を占めています。こうした豊かな自然と共存し育まれた棚田や農地、里山など、そこに暮らす人々との関わりの中で創りだされた風景が各地に展開しています。(→一覧へ)

 

全国のランドスケープ遺産