上高地(長野県松本市)

上高地大正池から横尾に至る全長約10km、穂高連峰等の3,000m級の山々に囲まれた梓川沿いの平坦地を上高地(かみこうち)と呼ぶ。W・ウェストンに代表される外国人らはその山岳景観を「日本アルプス」と称し、世界に紹介した。明治以降の西欧の文化、科学的知識の流入を背景として、日本の伝統的風景から新しい近代的風景の発見につながる重要な舞台となった。焼岳の噴火による大正池の出現、釜トンネルの開通により電源開発と観光開発が加速した。1927(昭和2)年に大阪毎日・東京日日新聞社主催「日本新八景」渓谷の部で第1位に選定され、1934(昭和9)年には国立公園に指定された。戦後、梓川の電源開発に伴う道路整備とモータリゼーションの進展により登山基地として発展したが、過剰利用による環境汚染や交通渋滞等の問題が発生。「ごみ持ち帰り運動」や「マイカーの乗り入れ規制」を先駆的に開始するなど、我が国を代表する国立公園として現在も自然環境・景観の保全と適切な利用のバランスに取り組み続けている。