戦争遺構とウサギの島(広島県竹原市)

ウサギの島瀬戸内海西部、芸予諸島を構成する大久野島は、数奇な歴史をもつ。古くから内海航路の要衝であったこの島には、日清戦争後に内海防衛のため芸予要塞(砲台)が建設され、さらに要塞廃止直後には陸軍の造兵廠火工敞忠海兵器製造所が建設着手され、昭和4年(1929)から20年(1945)まで、ここで毒ガス製造が続けられた。昭和25年(1950)に島全域が瀬戸内海国立公園の第2次指定対象地となり、昭和38年(1963)には「国民休暇村」として整備されるようになった。現在、ビジターセンターをはじめ各種レクリエーション施設が整備された島内には、1970年代から野生化が進んだ700匹以上のウサギが至る所にみられ、国内外の観光客に「ウサギの島」として親しまれている。同時に、この島固有の歴史を伝える日清・日露戦争に係る砲台跡、昭和時代の戦争に係る毒ガス貯蔵庫などの戦争遺構が静かに点在しており、静と動の絡み合った独自の景観が形づくられている。